武器輸出に関する厄介な動き ニューヨーク・タイムズ 社説 

【井上さとし議員のメールニュースより】

ニューヨーク・タイムズ 社説 (※電子版は2013年12月30日付、紙面は31日付)

〔見出し〕武器輸出に関する厄介な動き

 安倍晋三内閣が日本の武器輸出解禁に向けて動きつつある。世界の秩序と平和に

より大きな貢献をおこなうという安倍氏の政策スローガン、「積極的平和主義」の

一部だ。しかし、もう一つ武器輸出国が生まれることが、どう世界の利益になると

いうのか、まったく不明確だ。日本の経済的及び技術的基盤をふまえれば、潜在的

には巨大な輸出国となりうる。

 1967年、日本は共産国、国連の禁輸制裁対象国、国際紛争に関与する国に対する

武器輸出を禁止しはじめた。1976年、輸出禁止はその前文で「政府の行為によつて

再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」「全世界の国民が、ひとしく恐怖と

欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」と定める日本の平和憲法

精神のもとに、ほぼ全面的なものになった。これは、攻撃能力を有する軍隊はいか

なるものも戦争の原因となることを意味するものと理解された。

 武器の輸出禁止が効力を生じたのは、ちょうど日本が優れた経済力を獲得し始め

た頃のことで、輸出マーケットを渇望する軍事産業の発展を抑制した。米国、ロ

シア、フランス、英国のような他国では、軍事産業は胡散臭い効果を伴う外交政策

の軍事化に寄与してきた。

 小野寺五典防衛大臣は、日本が他国との武器の共同開発の障害となる武器禁輸を

解禁しない限り、日本の防衛産業は取り残される、と述べる。現在、日本は第三国

に輸出するかもしれない他国とともに武器を開発することはできない。防衛省は来

年3月に防衛産業を強化する計画を公表することを予定している。

 この間、安倍氏は厳格に領土の防衛のためにつくられた軍を海外で戦争ができる

軍に作り替えるための諸政策を発展させてきている。安倍氏のアドバイザーは「積

極的平和主義」の一環として、巡航ミサイルの取得を議論している。

 日本や他のアジア諸国がその軍事能力を高めることによって地域の中にある多く

の相違を解決できるのかは疑問であり、無益な軍拡競争を悪化させるだけだ。軍

事力の行使がそれだけで平和と安定を創出できないことは、米国がアフガニスタン

イラクで学んだとおりであり、中国も学ぶことになるだろう。日本は武器ではな

く、厳密な外交を通じて憲法の平和原則を輸出すべきである。すなわち、平和原則

の精神のもとに、武器管理の熱心な擁護者たるべきだ。